雫石町出身で盛岡在住のアーティスト・松嶺貴幸さんと、医療法人「a-live(アライブ)」(盛岡市三本柳)による共同アートプロジェクトによる壁面アートが8月7日、同法人が運営する「盛岡となん歯科・こども矯正歯科」で披露された。
松嶺さんは16歳の時にフリースタイルスキーでの事故により脊髄を損傷。それをきっかけに自身の生命と向き合う中で、米国でインダストリアルアートと出会い、文化に触発されアートの世界に飛び込んだ。
同法人理事長の山田優貴さんは自身がユーチューブに投稿する動画の企画を通じて松嶺さんに出会い、意気投合。松嶺さんも山田さんの「地域を盛り上げる活動をしたい」「患者の不安を和らげる環境づくりをしたい」という考えに共感し、院内にアートを通じて人が集う空間を作るアートプロジェクトを共同で立ち上げた。
プロジェクトでは、院内1階のフリースペースに壁面アートを制作。2階のコミュニティースペースや診療室に松嶺さんの作品約17点を展示する。壁面アートのテーマは「You got toothache.(あんた虫歯だよ)」。絵具を爆竹で爆発させて描く抽象画で作った壁紙を貼り、歯をモチーフにしたモニュメントで表現した。アートのベースとなる青色は歯医者をイメージする色として山田さんが選んだ。歯の輝きをイメージしたパール系の絵の具も使っている。
「私も歯医者が苦手」と松嶺さん。「歯医者は怖いとか、痛そうといったイメージがあって、足を運びづらい人も多いと思う。アートを使って空間を一変させることで興味を持ってもらい、治療以外の目的でも歯科医院に来てもらいたい」と話す。歯が爆発するようなアートについては「こうなってしまう前に歯医者に行こうという思いも込めた」と笑顔を見せた。
山田さんは「病院には子どもから大人まで幅広い年代の人が訪れる。歯科医院とアートのコラボレーションを見てもらうことで、異なるジャンルが枠を超えて協力し合ってもいいんだ、自由に楽しんでいいんだということを感じてもらいたい。患者に限らず、誰もが集える場所があることで、地域と交流を深められれば」と話す。
松嶺さんは「アーティストに向かって、一緒に何かやろうと声をかけてくるドクターはあまりいない。良い意味で医療者のイメージが変わった。同じように皆さんがアートを見た時に歯医者さんのイメージが変わるような、楽しい空間を作って待っている」と呼びかける。
壁面アートと2階コミュニティースペースの作品は自由に鑑賞可能。2階の展示は10月8日まで。診療時間は9時30分~17時30分(土曜は16時まで。最終受け付けは30分前)。木曜・日曜・祝日休診。