ニューヨーク在住のジャズピアニスト・穐吉敏子さんの作品や功績などを紹介する「穐吉敏子JAZZミュージアム」を盛岡に開設することを目指し、NPO法人「穐吉敏子ジャズミュージアム」が準備を進めている。
同法人の理事長を務めるのは、市内でジャズ喫茶「開運橋のジョニー」を営む照井顯さん。照井さんは1974(昭和49)年に初めて穐吉さんのジャズレコード「孤軍」を聞き、その演奏に魅了されたという。1980(昭和55)年に穐吉さんがトリオ編成で初来日公演を行った際には、招聘(しょうへい)元へ連絡し、岩手での公演を実現。以来、穐吉さんのコンサートを主催するなど交流を続け、穐吉さんからは親しみを込め「世界一クレイジーな私のファン」と呼ばれている。
「穐吉さんを知れば知るほど夢中になる」と照井さん。「穐吉さんの演奏は、背筋を伸ばして対峙(たいじ)しなければと思わせる魅力がある。ジャズピアニストとしての技量だけではなく、一人の人間としてほれがいがある」とも。
穐吉さんのミュージアムを開くことは、照井さんを含めファンにとって長年の夢だった。照井さんには「誰かが開いてくれれば資料を持っている提供する」という考えもあったが、「照井さんが開くのがいいのではないか」という声に背中を押され、ミュージアムを開設する場所と方法を探していた。
知人に相談する中で共感者が集まり、クラウドファンディングで支援を募る方法と、今年10月に開業予定の新たな「盛岡バスセンター」に作られるホテル「HOTEL MAZARIUM(ホテル マザリウム)」のラウンジへの開設という提案を受けた。
ミュージアムでは穐吉さんのレコードほぼ全種類のほか、雑誌や書籍、ポスターなどを展示。資料の中には照井さんが穐吉さんから直接預かったものもあるという。カフェバーも併設し、「ミュージアムを中心として、さまざまな文化や価値観が出合い、互いをリスペクトし、セッションする場を目指す」と照井さん。
ミュージアムの開設を記念し、11月には穐吉さんが盛岡を訪れる予定。穐吉さんの娘・Monday満ちる(マンデイみちる)さん、孫のニキータさんとのトリオで、ホテルマザリウムのラウンジと盛岡市民文化ホールでのコンサートを企画している。
照井さんは「バスセンターは開かれた場所で、穐吉さんを知らない人も訪れるのがいいと思った。穐吉さんは努力を続けて、世界で活躍するピアニストとなった。ミュージアムでの出会いをきっかけに、穐吉さんを知り、彼女の音楽を聞いて、心をつかまれる人が増えればうれしい」と話す。
クラウドファンディングは1口3,000円から。金額に合わせて返礼品を用意する。7月31日まで。