漆の精製加工・漆塗り製品の販売などを行う「浄法寺漆産業」(盛岡市北飯岡)が3月17日、ウクライナ国旗の色を使った金継ぎ修理の受け付けを始めた。
金継ぎは、漆を使って壊れた陶磁器を修理する日本古来の修復技術。同社では5年前に金継ぎの修理サービスを始め、ここ数年は注文数が3倍に増えているという。社長の松沢卓生さんは、ウクライナの情勢を受け、事業の収益の一部を寄付したいと考えていた。そこで、海外での認知度も高まっている金継ぎを通じた支援を企画した。
松沢さんは「金継ぎは国連やパラリンピックでの演説にも取り上げられ、国同士の分断が進む中で金継ぎの精神が訴えられている。金継ぎをした器のようにウクライナが再び元通りになり、平和になることを願っている」と話す。
金継ぎは、器の割れた部分や欠けた部分を漆で接着したり、埋めたりした後、基本的には金粉などの金属粉をまいて装飾する。ウクライナ支援の金継ぎでは、ウクライナ国旗の色をイメージした色を使い、青色を漆で、黄色は本金を使って表現している。青色の部分は国旗の色になるべく近づけるために色漆を若干調合して作っているという。
支援についてSNSを通じて発信したところ、国内だけではなく海外からも反応があった。問い合わせが多数寄せられ、修理の依頼にもつながっている。国内外で活動する金継ぎ師に声をかけていて、賛同があった金継ぎ師と共同で企画を進める考えもある。
ウクライナ支援金継ぎは収益の50%を日本赤十字社の「ウクライナ人道危機救援金」に寄付する。松沢さんは「ばらばらに壊れてしまった器でも、根気よく漆を使って金継ぎをすれば必ず修復できる。欠けてしまったパーツを元の形通りに作ることもできる。しかも修復後に新たな美しさと魅力が感じられるのが金継ぎ。ウクライナも各国の支援を得て、金継ぎと同じようにきっとまた美しい国として復活すると思う。世界融和のために漆や金継ぎの精神が貢献できれば」と話す。
金継ぎの問い合わせ・依頼はホームページの専用フォームで受け付けている。