盛岡てがみ館(盛岡市中ノ橋通1)で現在、吉田孤羊(こよう)コレクション展「啄木ゆかりの地めぐり」が開催されている。
吉田孤羊は盛岡出身の文芸研究家で、石川啄木研究家としても知られている。同館に収蔵されている資料の多くは、吉田孤羊が収集したもの。資料の中には書簡以外にも、明治から昭和にかけて撮影された写真や絵はがきが数多く残っているという。今回の展示では、啄木が過ごした岩手・東京・北海道の風景が写った写真と絵はがきのほか、関連した書簡、短歌などを紹介する。
展示企画のきっかけの一つには、コロナ禍で旅行ができない現状がある。担当学芸員は「本年度の企画展がほとんど中止になってしまっている中で、どうしたら皆さんに楽しんでもらえるか考えている。写真や絵はがきといった資料であれば見て楽しむこともできるし、ちょっとした旅行気分も味わってもらえたらという思いで企画した」と話す。
展示は孤羊の功績や啄木について紹介するコーナーからスタート。その後、岩手・東京・北海道の順で啄木ゆかりの場所を紹介する。岩手のコーナーでは渋民村の絵はがきや渋民尋常小学校、盛岡中学校の写真、東京では啄木が務めていた「東京朝日新聞社」、上野駅の写真、北海道では、啄木の短歌にも登場する函館市・大森浜の「砂山」の写真などが並ぶ。
展示されている絵はがきや写真は孤羊の著書「啄木写真帖(ちょう)」に使用するために集められたものがあり、絵はがきには本に使うために印字された文字を隠したと思われる跡が残されている。現在では見ることができない風景も多く、特に大森浜の「砂山」は貴重な写真だという。
併せて、岩手・東京・北海道の古い地図も展示。写真などに写る場所がどこにあるかを確かめることもできる。「展示を通して啄木ゆかりの地を巡る『聖地巡礼』の気分を楽しんでほしい」と学芸員。
「啄木の研究や本に使うための資料として集めたものが、今となっては見ることができない風景を残す記録になっている。啄木が見た風景を追体験しながら、展示を見てほしい」と呼び掛ける。
開館時間は9時~18時(入館は17時30分まで)。入館料は一般=200円、高校生=100円、中学生以下と市内在住の65歳以上は無料。第2火曜休館。5月24日まで。