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岩手の羊毛「i-wool」プロジェクトがグッドデザイン賞 羊毛からつながり広げて

岩手の羊毛を使った「i-wool」の毛糸

岩手の羊毛を使った「i-wool」の毛糸

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 岩手県と「岩手めん羊研究会」と「まちの編集室」の3者による「いわて羊を未来に生かす-アイウールプロジェクト-」が、2020年度のグッドデザイン賞を受賞した。

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 県内では現在、肉用のサフォーク種を中心に、食肉加工を主な目的とした600頭余りの羊が飼育されているという。羊は定期的な毛刈りを行うが、その羊毛は加工に適さないという理由で捨てられている。県が2018(平成30)年度にスタートした「いわてのめん羊里山活性化事業」では、羊の飼育技術や羊肉の品質向上とともに、羊毛の活用を目的とした調査と試作を行い、県産羊毛を「i-wool(アイウール)」としてブランド化することに取り組んできた。

 事業を進める中で、羊毛を使った岩手の伝統工芸「ホームスパン」では、輸入羊毛を材料にしている点に着目。材料としての活用を提案するも、サフォーク種の羊毛は硬めでしっかりした毛質が特徴で、ホームスパン作家らからは「毛質が違うため難しい」という声もあった。一方、羊毛の質にも個性があり、作家自身が羊を育てる農家の元を訪れ「この羊の毛なら使いたい」と求める動きも少しずつ始まっていたという。羊毛を活用したい県と、県産の羊毛を使いたい作家の考えが合致し、そこから農家と作家をマッチングする流れが生まれていった。

 その後は「i-wool」を使った製品の展示販売や岩手の羊毛について紹介する展示などのイベントも実施。しっかりとした質感が特徴の「i-wool」は、マフラーなどのほかコートの服地、膝掛けにも向いているという。展示会では、加工前の羊毛や毛糸を一緒に並べるなど、素材としての活用や加工の過程についても広く周知する工夫をした。

 今回の受賞では、この羊毛を軸とした産業循環や、コミュニティーづくりなどの取り組み全体が評価されている。審査員からは「県産羊毛をブランド化し、農家と作家をつなぎ、商品販売会に農家を巻き込むなど顔が見える関係をつくった功績は大きい。新たなビジネスを創造し、地域内で循環させていく。共通のビジョンを掲げた人たちのコミュニティーは広まりつつあり、羊を軸にした地産地消の取り組みは、地域活性化などのさらに大きな可能性を秘めている」という声が寄せられた。

 今後はホームスパン製品として改良を重ねて量産体制を整え、展示会を通じた周知活動と販路の拡大も目指す。素材としてはホームスパン以外の活用を探るほか、農家によるグリーンツーリズム企画や加工過程での福祉施設との連携など地域活性や原料を作る仕組みを整えていく考えがある。10月27日・28日には岩手県庁生協で、11月6日~17日には「shop+spaceひめくり」で受賞記念のi-wool製品販売会も開催する。

 デザイナーとしてプロジェクトに関わる「まちの編集室」の木村敦子さんは「プロジェクトでは羊毛製品ではなく、羊毛自体をブランド化する工夫や、農家と作家の関係づくりを重点とした。『i-wool』というものだけではなく、プロジェクト全体が評価を受けたのは、農家や作家の皆さんにとって大きな意味があると感じる。羊を軸とした地産地消を目標に、これからも県産羊毛を未来に生かす取り組みを続けてほしい」と話す。

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