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盛岡の銅版画工房が通信講座を開始 燕のように表現との出合い届ける

通信講座「燕コース」小さなフライヤー。手紙のやり取りを燕の飛ぶ姿に例えた

通信講座「燕コース」小さなフライヤー。手紙のやり取りを燕の飛ぶ姿に例えた

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 「紙町銅版画工房」(盛岡市上ノ橋町)が、初心者向けの通信講座「燕(つばめ)コース」を開講した。

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 同工房は2001(平成13)年に開設。以来、19年にわたって一般向けの銅版画教室を開いてきた。これまでには、引っ越しなどさまざまな事情で教室に通うのが難しくなったOB・OG向けの通信講座「殿様クラス」も実施。各地へ散らばったOG・OBを「殿様」に例えて、この名前を付けた。初心者向けの通信講座は「殿様クラス」のノウハウを生かして準備を進めてきた。

 通信講座を開講した背景には、新型コロナウイルス感染症の影響もある。教室は人数制限などの対策も行っているが、人が集まるという特性上参加しづらいという状況だった。その中で「リモート」が主流となりつつあることに着眼。同工房ならではの「リモート」として何ができるかを考え、生まれたアイデアだという。

 同工房代表の岩渕俊彦さんは「さまざまな理由があって工房に通うのが難しいという人も多いと思う。下絵を描いたり、銅板に向き合ったりする作業はとても個人的なもので、じっくり集中して取り組むには自宅で取り組むのが向いているとも言える」と話す。

 「燕コース」は1カ月半から3カ月を目安に、4回の手紙のやり取りを通してエッチングによる作品制作を行う。エッチングは、酸が金属を腐食させる作用を利用した銅版画の技法。銅板に腐食を防ぐ「グランド」を塗り、そのグランドを剥がすように描画することで銅板を露出させ、腐食液に漬けて製版を行う。「燕コース」ではあらかじめグランドを塗った約12センチ×9センチの銅板を用意し、受講生は自宅で描画を行い、製版や刷りの作業は工房が担当する。

 銅板のやり取りは郵送で行い、工房からの手紙は「つばめの便り」としている。「燕コース」という名称は、燕が身近な鳥であり工房の近くでも飛ぶ姿を見られること、害虫を食べる益鳥や商売繁盛の印としても親しまれていること、そして「グランド」を塗った黒い銅板が郵送で行き来する様子を燕の姿に例えて付けた。

 構想自体は今年3月からあり、実際にモニター受講といったテストをしながら準備を進め、6月中旬ころにスタート。現在は受講生を募集している。工房の近くに住む人、制作経験がある人も歓迎するという。

 「初めて銅版画にチャレンジする人に文章で教えるのは難しいが、これまでのノウハウを言葉に置き換え、どう伝えるかを洗い出す工程は自分にとってもメリットになっている」と岩渕さん。「銅版画はインクまみれになりながら自分で刷ってみるのが楽しい。通信講座からスタートして、工房の教室に通うのも、『燕コース』で作ったものを自分で刷ってみたいというのも歓迎。表現との出合いを皆さんの元へ届けられれば」と呼び掛ける。

 受講料は1万5,000円。受講の申し込みは電話(TEL 019-652-6316)とSNSで受け付ける。

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