インテリアショップ「designshop(デザインショップ)」(東京都港区)が、盛岡の南部鉄器工房「釜定(かまさだ)」について取り上げた書籍「南部鉄器のある暮らし-釜定の仕事」を企画し、現在、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で先行予約販売を行っている。
「designshop」のオーナー・森博さんは盛岡出身。1998(平成10)年に友人と共に東京でショップを立ち上げた。同店では20年以上にわたって「釜定」の南部鉄器を取り扱っている。盛岡で暮らしている時は土産品として南部鉄器に「取っつきにくいイメージを持っていた」という森さん。東京で「釜定」の鉄器を見て、素材感やデザインの良さに魅了されたという。
森さんは「普段使いの物として南部鉄器が紹介されていたことが印象を変えた。地元にいると分からない良さや魅力を、県外に出て再認識できた」と話す。南部鉄器をもっと広めようとショップでの取り扱いのほか、展示会も開催している。
今回の書籍は長きにわたり商品販売や展示会で関わってきた一つの節目として企画。「designshop」はオンラインショップをメインにしていることから、ウェブ上での紹介という形ではなく、本というリアルな形で手に取ってもらおうと考えた。南部鉄器に関連する書籍は学術的な内容が多いことから、内容は「使い手目線」にこだわる。釜定の鉄器を使っている人や、これから使う人へ、南部鉄器と釜定の歩み、作り手の背景を知ってもらうことで、末永く使ってもらいたいという思いも込めた。「釜定」3代目の宮伸穂さんも、この意向を聞いて企画を快諾したという。
書籍には約120点の「釜定」の製品カタログをはじめ、盛岡の風景写真や釜定の工房の写真、歴史などを掲載。実際に使っている人の声として、スタイリスト・粉料理研究家の堀井和子さん、コーヒー豆専門店「KOFFEE MAMEYA(コーヒー マメヤ)」のヘッドバリスタ・三木隆真さん、岩手大学名誉教授の及川桂子さんらによる記事も読みどころとなっている。
発行は7月上旬を予定しているが、4月15日からクラウドファンディングサイト「Makuake」を通じて予約を受け付けている。支援は一口2,280円からで、支援者は同書籍のほか、過去に開催した展覧会のカタログや「釜定」の製品など金額によって異なる返礼品が贈られる。
森さんは「南部鉄器をはじめ、日本の伝統工芸は数多くの課題を抱えている。この本が『もの作りのバイブル』となり、職人やデザイナー、作家の皆さんにも手に取ってもらうことで、他の伝統工芸産地でも、同じように地元のものの良さを発信する動きにつながればと思う。伝統工芸品を使ってもらうためには、使うことで得られる恩恵を知ってもらうこと。南部鉄器の恩恵を知ってもらうことで南部鉄器を広めること、そして日本の伝統工芸の課題を減らす一助になれば」と支援を呼び掛ける。
書籍はA5判・128ページ。予定価格は1,980円。「Makuake」での先行予約販売は6月25日まで。7月上旬からdesignshop、釜定のほか、全国書店にて順次販売。