「もりおか啄木・賢治青春館」(盛岡市中ノ橋通1)で現在、第86回企画展「森荘已池(もり そういち)展-岩手初の直木賞作家の生涯-」が開催されている。
森荘已池は、1907(明治40)年に現在の盛岡市鉈屋町に生まれ、作家や詩人、宮沢賢治研究者として筆を取り続けてきた。1940(昭和15)年に、「小説集 『店頭(みせさき)』」が芥川賞候補となり、1944(昭和19)年には「蛾と笹船」「山畠」で第18回直木賞を受賞。岩手で初めて同賞を受賞した作家となった。
企画展では森荘已池の幼年時代から、宮沢賢治との出会いと交流、芥川賞候補と直木賞受賞についてと時系列に生涯をたどっていく。展示する資料は「小説集『店頭』」や「蛾と笹船」などの著作16点のほか、森が編集人を務めた岩手詩人協会の詩誌「貌(かお)」、直木賞受賞時の「文藝讀物 昭和19年4月號」といった書籍や同人誌など29点、森家の協力のもと集まった自筆の取材ノートや原稿、書簡など計6点が並ぶ。資料に加えて、29枚のパネルを使って各年代の出来事や活動を紹介していく。
「もりおか啄木・賢治青春館」で森荘已池について取り上げるのは、開館当初の企画展以来2回目。2人が出会ったのは1925(大正14)年、森が盛岡中学校の4年生の時だったという。小説「店頭」には賢治との出会いがつづられ、2人が送り合った書簡からも交友が深まる様子がうかがえる。
2月29日には、森荘已池の四女・森三紗さんによるギャラリートークも予定している。
同館の担当者は「森荘已池は、岩手で初めて直木賞を受賞した作家ではある一方、盛岡に暮らす人の中でも知らないという人が多い。岩手・盛岡出身者の文学賞受賞が続き、『文学の街』としても注目が集まる中、彼の存在をもっと知ってもらいたい。初めて知る人にとっては入門編、すでに知っている人にとっても貴重な資料が並ぶ。ぜひここから掘り下げてもらえれば」と呼び掛ける。
開館時間は10時~17時。第2火曜休館。入場無料。4月5日まで。