「implexus art gallery(インプレクサス・アート・ギャラリー)」(盛岡市本町通1)で現在、岩渕俊彦さんの銅版画展「eau forte(オー・フォルト)-強い水-」が開催されている。
岩渕さんは市内上ノ橋町に「紙町銅版画工房」を開いている銅版画家。2011(平成23)年からは「もりおか中津川まち歩きスタンプラリー」のスタンプ制作を担当し、かわいらしいデザインで人気を集め、地域住民からは「スタンプラリーのスタンプの人」というイメージでも親しまれている。
今回の作品展はギャラリーのオーナー・下館和也さんが、岩渕さんの工房を訪れてそこに飾られている作品を見て、作品の展示を依頼したことをきっかけに企画。ギャラリーオープン後、1回目の作品展にも岩渕さんの作品が展示されていた。ギャラリーとしては初めての個展となる。
ギャラリーには「岩手・東北と世界とつなぐ」というコンセプトもあり、岩手にゆかりある作家の紹介も行っている。下館さんは「ギャラリーを開く時に、ギャラリーの近くに工房を構える岩渕さんのところへあいさつに行った。その時に作品を見てなんてすてきなんだろうと思い、個展をうちで開きませんかと提案したら、快くOKしてくれた。こんなに早く決まると思わず驚いたし、うれしかった」と話す。
岩渕さんは「最初に下館さんから連絡を受けた時は、工房で開いている銅版画教室の参加希望者なのかと思っていて、ギャラリーの話を聞いてびっくりした」と話し、「この街に新しいギャラリーができたというのは大きな価値がある。外に面した大きな窓からは緑が見えて、季節の移り変わりが見えるのも良い。そういった風景と合わせながら展示内容を考えた」とも。
作品展のタイトルになっている「eau forte」は、フランス語で「強い水」の意味で、銅版画の技法で代表的な「エッチング」のことを指す。エッチングは酸を使って銅の板を腐食させてイメージを刻み込む技法。今回の個展ではエッチングやアクアチントなどの技法を使った腐食銅版画がメインとなっている。
展示はギャラリーの3面の壁を使い、それぞれ傾向が異なる作品世界を展開。壁一面を覆う大きなドローイング作品「結晶の庭」を中心に、その作品に至るまでの過去の銅版画作品、「銅版画に刻みたい」と強く願う身近な風景などを描いた最近の銅版画作品のほか、電気仕掛けの万華鏡のような立体作品を展示している。
岩渕さんは「スタンプラリーのスタンプのイメージを持っている人が、僕の普段の作品を見たらきっと驚くと思うが、それも良いと思っている。一人の作家として盛りだくさんな内容になった。多目的な作風を見てもらいたい。過去から現在へ、違うタイプの作品を並べていうので、変遷を楽しみながら、一人の人間が作る何かを見つけてもらいたい」と呼び掛ける。
開廊時間は11時~19時。月曜・火曜休廊(11月4日のみ開廊)。10月23日・30日、11月13日・16日は岩渕さんが在廊予定。11月16日まで。