岩手県立博物館(盛岡市上田)で現在、地域展「明日につなぐ気仙のたからもの」が開催されている。
東日本大震災により、岩手県沿岸地域にある数多くの博物館や資料館のほか、文化遺産、自然遺産などが深刻な被害を受けた。その状況から、同館では2011年4月から文化財などの救出する活動「文化財レスキュー」を開始。陸前高田市では約56万点の資料が被災し、そのうち約46万点が救出された。現在再生しているのは22万点で、残る24万点の修復が進んでいる。
津波の被害を受けた文化財は海水に含まれる塩分によってカビが発生し、劣化が早まる危険性もあり、泥の除去や除菌のほかに塩分を取り除く作業も必要になる。こうした修復については前例も少なく、全国各地の研究者や専門家が協力して方法を探り、技術を確立していった。
発災から7年がたち、修復技術や資料を安定して長期保管できる状態にする「安定化処理技術」は進化しているが、修復を待つ資料の中には改良を加えた技術が必要なものや、新しい技術が必要なものも含まれているという。
担当学芸員の赤沼英男さんは「展示している資料の多くが、全国の専門機関や研究者の連携によって救われたもの。現在も試行錯誤を繰り返しながら多くの人が取り組みを続けている。残る資料も何とか復元したい」と話す。
今回の展示では陸前高田市の文化財を中心に、東日本大震災で被災した気仙地方の資料93点を展示。同館が「文化財レスキュー」を始めるきっかけとなった「吉田家文書」や、地震の揺れによる被害を受けた住田町の「木造阿弥陀如来坐像(ざぞう)」のほか、漁に使う道具や震災前の景観や植物について分かる資料、高度な修復技術で再生された絵画などが並ぶ。
会期中には学芸員による展示解説や、特別講演会、シンポジウムなどの関連イベントも実施。4月には展示内容を変えて第2弾の開催も予定している。赤沼さんは「被災資料の修復は復興の道しるべ。過去を知り検証する手掛かりになる。昔のことが分かる資料を残すのは未来の復興のためにも必要なこと」と話し、「これから先、どんな災害が待ち受けているか分からない。その時に私たちが研究する修復技術がきっと役に立つと思う。展示を見ることで活動を知ってもらうことも、支援や復興につながる」と来場を呼び掛ける。
開館時間は9時30分~16時30分(入館は16時まで)。月曜休館。入館料は一般=310円、学生=140円、高校生以下無料。3月28日まで。