盛岡市内を流れる中津川沿いの河川敷に、「忘れな草をとらないで下さい」という注意書きが設置された。
中津川の河川敷には5月ごろから忘れな草が咲き、多くの市民から親しまれている。盛岡出身の画家・深沢紅子は忘れな草を絵の題材として好んで描き、彼女が愛した風景の一つとしても知られる。「先人が愛した昔ながらの風景を守ろう」と、市民団体などが保護活動に取り組み、苗の植え込みや特定外来生物「オオハンゴウソウ」の駆除などを行っている。
中津川沿いに立つ「深沢紅子 野の花美術館」(盛岡市紺屋町)の前は、忘れな草の名所の一つ。同館でも保護に取り組み、河原の草刈りを行う際に忘れな草が咲く場所を残してほしいと岩手河川国道事務所盛岡出張所へ依頼してきた。同所でも花が咲く場所の周りだけ草を残して刈り取るなど工夫を凝らし、活動に協力している。
保護を行う一方で、今年は忘れな草を摘み取る人や根ごと持ち帰る人が多くなっているという。美術館からの相談を受け、同出張所は6月下旬から「忘れな草をとらないでください」という注意書きを美術館前と、対岸に当たる県民会館側の河川敷に設置。くいとビニールテープを使って群生地を守るように囲いも付けた。
美術館館長の石田紘子さんは「忘れな草はかわいらしい花だから、持って帰りたい気持ちはよく分かるが、一番美しいのは自然の中にある姿。たくさんの人の頑張りのおかげで少しずつ花が増えてきた。そっと見守ってもらえたらうれしい」と話す。「美術館に訪れる人を河川敷に案内して、一緒に忘れな草を見ることもある。持ち帰りを止めたいのではなく、みんなで見てほしいからという気持ちが一番強い。ぜひ河原を歩いて忘れな草に思いを寄せてみてほしい」とも呼び掛ける。
忘れな草は秋ごろまで見られる。