盛岡市動物公園ZOOMO(ズーモ、盛岡市新庄)で11月15日、雄のニホンカモシカ「ムツ」の展示が始まった。
ムツは「東京都井の頭自然文化園」で昨年6月21日に誕生。ニホンカモシカは群れを作らず、単独で暮らす動物のため、同園は搬出先を探していたという。ZOOMOでは2017(平成29)年に保護され飼育展示していた雌の「くらら」が2023年8月に死んでから、ニホンカモシカの展示を休止。再開に向けた検討を進める中、ムツの来園が決まった。
ムツは11月4日に盛岡に到着。検疫のため1週間ほど屋内で過ごし、屋外運動場での展示を始めた。飼育を担当する伊藤博信さんは、くららも担当していたベテラン飼育員の一人。伊藤さんによると、ムツはこれまで両親と一緒に暮らしていたため、1頭になるのは初めてで落ち着かない様子もあり、なかなか餌も食べなかったという。現在は安定した様子で、餌も食べている。
伊藤さんは「くららは幼獣の時に保護され、人工保育だったので人間にも慣れていた。ムツはまだ飼育員を警戒していて、こちらのことは認識しつつもなんとなく距離感がある。来園客の目の前を歩くこともあるようなので、少しずつ慣れてきたかなと感じている」と話す。
井の頭自然文化園時代のファンがムツの様子を見にZOOMOに来園することもあるという。広報担当の森敦子さんは「SNS上でも『ムツが盛岡の環境に行くなら安心』という声があり、こちらとしても良かったなとほっとしているところ。園内や駐車場で野生のニホンカモシカを見かけることもあるほど、ZOOMOにとっては身近すぎる生き物。身近だからこそ知らなかった生態を知る機会になれば」と話す。
ニホンカモシカを観察するポイントについて、「縄張りを持つ生き物なので、休む場所など行動パターンが決まっている。ムツは見晴らしのいい高い場所にいることが多い」と伊藤さん。「目の下にある眼下腺というところから出る液をこすり付けて自分の縄張りを知らせるなど、野生で見られる行動をすることもあるので、じっくり観察してもらいたい。観察していると、目が合う瞬間があるはず。私たちがムツを見ている一方、ムツも人間をしっかり見ているんだと知ってもらいたい」と話す。