小麦と玄米を原料にしたスナック菓子が、新しいコミュニケーションツールとして注目を集めている。
小麦70%、玄米30%(いずれも岩手県産)の割合で配合した粉末を無脂肪牛乳と水でかき混ぜて生地にしてから、フライパンで「棒状」に焼いただけというシンプルなスナック菓子。これを開発したのは、岩手大学地域連携推進センタでー客員教授を務める首藤文榮さん(獣医学博士)。1998年より、人間と動物のコミュニケーションを生理学と心理学の両方から研究する「人と動物のこころ研究会」でも活動する。
約3年前に、このスナック菓子(仮称=「ガレップ」)を研究・開発するきっかけになったのは、首藤教授が北海道の特別養護老人ホームで見た犬によるアニマルセラピーの現場。重度の要介護者たちがいかにして犬とコミュニケーションを円滑にとることができるようになるかを考えた結果、「食べ物を分け与える」行動にたどり着いたという。
首藤博教授は「母親が子どもに食べ物を分け与えるのと同じように、犬に食べ物(エサ)を分け与える状況は、人間にとって大切なコミュニケーションの瞬間」と説明する。
あえて棒状にしたのは、食べ物を与える時に「ちぎる」行動を促すため。犬の大きさに合わせて食べやすい長さにちぎってあげることで、この食べ物が相手のことを思いやる「意志表現の媒体」になると考えた。
さらに、ちぎる行為は要介護者にとって「リハビリになる」という。「健常者には考えられないかもしれないが、やや弾力性のあるこの食べ物は、ちぎるときに指だけでなく腕や脇腹などの筋肉を使うもの。(モチモチ感のある)玄米を混ぜたのは適度に筋肉へ刺激を与えられるためで、その配合の割合がポイント」と話す。焼き具合や棒状に焼いた時の太さを変えることで、筋力への負荷を変えることも容易だ。
研究室の学生たちには「さっぱり味」が好評で、テーブルに置いておくと、いつの間にかなくなっているという。「ビールのつまみにも、結構いける」と首藤教授。
実際に介護現場での検証はこれからだが、このスナック菓子が脳や筋肉に与える刺激を測定するなどして実用化を目指すとしている。