岩手県を中心に点在する南部曲り家を調査した写真集「旧南部藩の消えゆく茅葺き『曲り家』」が先月発売になった。
写真集を出版したのは、盛岡市在住の今野幸正さん(60歳)。盛岡市内の広告代理店を退職したのをきっかけに写真集として自費出版した。
幼少の頃に茅葺きの直家(すごや=真っ直ぐな棟の家)に住んでいたことから、茅葺きの家に興味を持っていたという今野さん。県や市町村の教育委員会に茅葺きの家屋について問い合わせたところ、現存するものについてはあまり資料が残っていなかったことから、2003年に独自に調査・取材を始めたという。
「当初は調査して逆に教育委員会に教えてあげる、ぐらいの気持ちだった」(今野さん)が、調査・撮影が進むにつれて、旧南部藩の家屋の特徴として知られる曲り家にフォーカスし資料をまとめるようになった。この4月に退職したのを機に、岩手県内に住宅として現存する9棟と廃屋として原型を留める19棟、そして資料館などに使われている公共に展示される23棟を写真集にまとめた。取材に応じた家主には、すべて承諾書を得て掲載した。
今野さんは「ひと口に曲り家といっても地域によって間取りや建て方が異なっている。貴重な建物のはずだが、実際には修理はもちろん解体にもお金がかかることから、ほとんど放置されているのが現状。分布や定義があいまいになっているのも気になっていたので、体系立てて残してみたかった」と話す。「年連を重ねるとこういった建物にノスタルジーをかき立てられたのも大きい。自分にとっての退職記念というのもある」とも。
写真集には、すでになくなったり改装された曲り家の間取りを図面にしたほか、隣の青森県や秋田県に残る曲り家にも触れている。
体裁は変形AB判、72ページ、オールカラー。価格は2,100円。岩手県内の主要書店で販売。