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矢巾町の施設が舞台の絵本「やさしいカタチ」 福祉の新たな側面を知って

写真絵本「やさしいカタチ」表紙

写真絵本「やさしいカタチ」表紙

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 矢巾町の福祉施設「みちのく療育園メディカルセンター」を舞台にした写真絵本「やさしいカタチ」が7月14日、彩流社から発売された。

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 作者は写真家の大西暢夫さん。大西さんは15年ほど前にみちのく療育園メディカルセンターを見学に訪れ、施設を利用する重症心身障害者と施設職員、作業療法士らと出会い、職員の明るさやユーモラスに引かれたという。その後、岩手を訪れるたびに施設に立ち寄り、写真を撮影してきた。

 大西さんは「重症心身障害者の皆さんは体を動かせなかったり、目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、意思疎通も難しい。職員の皆さんは『こうなのかな?』『ああなのかな?』と疑問符を付けたやりとりで利用者の皆さんに話しかけているが、返事はないし、正解もない。でも職員の皆さんは問いかけ続ける。そのやりとりに優しさやユーモアを感じた」と話す。

 大西さんが特に興味を持ったのが、利用者が使う「姿勢保持装置」。座位や立位を保てない人が適切な姿勢を保つための装置で、使う人の体に合うようなさまざまな工夫がされている。絵本では施設の職員と共に、利用者が使う姿勢保持装置と装置を作る職人「トラさん」に焦点を当てる。

 絵本には黒い背景の中でスポーツカーのように撮影した姿勢保持装置の写真も掲載。「姿勢保持装置は一人一人に合わせたオーダーメード。いわば超カスタムカー」と大西さん。「初めて見た時は、なんだこれはと思ったし、どうやって乗るのか、どうやって動かすのかも分からない。でも、使う人に合わせた細かな工夫がされている。興味津々だった」と話す。

 絵本の後半は姿勢保持装置を作るトラさんを中心に取り上げ、設計の様子や試作品を施設に持ってくる様子を紹介する。意思疎通が難しい利用者に合わせて装置を作る過程は明確な答えはなく、時間の経過によって微調整が必要になることもあるという。大西さんは「完成した姿勢保持装置に乗ったまま、眠りについてくれたら、それが彼らからの『ありがとう』だと思えた」という文章で本を締めくくっている。

 絵本は、子どもたちに職人の仕事を知ってもらいたいという思いもあって作ったという。大西さんは「福祉や障害について専門的に学ばなくても、アイデアに満ちた物作りの世界を通じて、福祉の世界と関わることができる。こういう現場があることや、その仕事を面白く見せるのが、私のような第三者の役割。福祉の新しい側面を知ってもらい、興味を持ってもらいたい」と話す。

 B5判、56ページ。価格は2,420円。

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