岩手県立図書館(盛岡市盛岡駅西1)で現在、企画展「地を往(ゆ)きて走らず~岩手と牛~」が開かれている。
以前、馬に関する企画展を開催した際に、来館者から「牛についても知りたい」という声があったことが今回の展示につながったという。同館の山本祥子さんは「牛は身近な動物で、岩手の産業としても長い歴史がある。その歴史に少しでも触れてもらえれば」と話す。
展示は3章構成。1章は「牛と人とのかかわり」と題し、狩猟から牧畜への移り変わりや牛の信仰と文化、現在の用畜と牧畜について紹介する。2章では「岩手の暮らしと牛」を取り上げ、県沿岸部から塩や海産物などを牛に載せて内陸部へ運んだ「牛追い」と、「塩の道」や「牛(べこ)の道」と呼ばれる交易路について解説するほか、牛追いの情景を歌った民謡「南部牛追唄」に関する資料が並ぶ。展示室内には、同館が収蔵する南部牛追唄の音声が聞けるコーナーも設けた。
3章は「岩手の産業と牛」と題し、岩手のブランド牛としても知られる「日本短角種」や「黒毛和種」の違い、盛岡藩の家老による政務日誌「雑書」に記された牛乳の記録などを紹介する。「『雑書』には、現在の葛巻町から牛乳を取り寄せて献上したことが書かれている」と山本さん。「葛巻町は今も酪農が盛んな地域として知られているが、歴史をひもとくと昔も同じだったと分かり、納得感がある」と話す。
ガラスケース外の展示資料には県立図書館が収蔵する牛に関する書籍や、チーズや牛肉に関する書籍、南部牛追唄に関連するCDなどが並ぶほか、奥州市の「牛の博物館」による発行物もあり、一部は館外への貸し出し可能。関連イベントとして館内のミニシアターで6月9日と7月8日の14時から、田野畑村に暮らす酪農家族を追ったドキュメンタリー映画「山懐に抱かれて」の上映会を行う。
山本さんは「岩手では牛を家族のように扱い共に暮らす文化があった。生活に溶け込んだ身近な動物として歴史を重ねてきた牛たちについて、文化や産業の面から知識を深めてもらえれば」と呼びかける。
開館時間は9時~20時。期間中の休館日は6月28日。7月21日まで。