もりおか歴史文化館(盛岡市内丸)で現在、企画展「もりおか古文書学演習-古文書が語る盛岡南部家の歴史-」が開かれている。
徳川将軍家から送られた書状。3つとも同じに見えるが送った季節が違うのが解読ポイント
同館に収蔵されている資料の大部分は、盛岡藩主を務めた盛岡南部家に伝わるもので、特に文献が多いという。その一部分が古文書に分類されている。歴史学上、文献史料のうち、特定の差出人と受取人がいる手紙や命令書などが古文書と呼ばれる。
今回の展示は古文書に関する知識を整理する学問「古文書学」をテーマに、「古文書学演習」と題して来館者が古文書の解読に挑戦する内容となっている。1章から4章まで時代ごとに古文書を並べ、13枚のワークシートを用意。来場者はシートの設問に従って61の古文書を読み解いていく。展示する古文書の中には豊臣秀吉や伊達政宗、徳川将軍家から盛岡南部家へ送られた貴重な書状もある。
企画の背景には「本物の資料をよく見て観察してほしい」「研究者の気分を味わってほしい」という思いがある。担当学芸員の熊谷博史さんも「古文書学を知ってから、歴史を学ぶことがより面白くなった」という。「古文書は難しい資料なので、現代の言葉に直したものや解説を読むだけで、本物の資料はなかなかじっくり見てもらえない。本物の古文書を見て、そこから情報を引き出すのが面白いという古文書学の魅力を少しでも皆さんに伝えたい。展示を最後まで見ると、なんとなく古文書が読めるようになっているはず」と力を込める。
展示は古文書の定義の解説から始まり、各章で古文書を解読するための「極意」を順を追って紹介する。資料解説パネルは内容を最小限にし、その代わりに古文書を読み解くためのポイントをまとめた「解読の鍵」というパネルに添えた。古文書に記された花押や印章、関連する人物と家系図など一覧にした「便覧パネル」も展示室内に用意。来館者は「解読の鍵」や便覧を使いながら、古文書の差出人や受取人、いつの時代の物かといった情報を読み解いていく。
来館者が展示資料を読み解くという内容は同館の企画展では異例だが、好評を得ている。来館者アンケートには「古文書が苦手だったけど、展示を通じて面白いと感じた」「古文書の奥深さを知った」「違う展示で古文書を見るのが楽しみ」といった感想が寄せられた。
熊谷さんは「古文書学に触れることで、博物館展示との新しい向き合い方を知ってほしい。例えば、差出人と受取人がいるのが古文書という知識を覚えてもらうことで、違う展示で古文書を見た時に『差出人と受取人がいるからこれは古文書』と思い出してもらえるだけでうれしい。とにかく時間がかかる内容なので、余裕を持って足を運んで」と呼びかける。
開館時間は9時~18時(入場受け付けは17時30分まで)。入場料は、一般=300円、高校生=200円、小・中学生=100円。盛岡市内在住・就学の65歳以上と小・中学生は無料。2月19日まで。