文庫カフェ「Cafe若草文庫」(盛岡市大通2)がオープンして1カ月がたった。
同店を営む「太陽産業」(秋田県)は、中古品販売店や介護施設などを運営。次の事業展開として、「若い人が働く場所を増やそう」という思いで飲食事業への参入を考えていた。統括部長の佐藤優作さんは「秋田でも岩手でも、若い人が県外に出て戻ってこないという課題は同じ。その背景には地元にはやりたい仕事がない、働く場所がないという若者たちの考えがある」と話す。
数ある飲食分野から着目したのがカフェ。秋田県の「赤居文庫」のほか、宮城県の「青山文庫」、東京都の「黒澤文庫」といった文庫カフェの存在を知り、フランチャイズ店として盛岡での開業を決めた。各店に共通するのは店内に1000冊以上の本が並び、アンティーク調の家具が使われていること。各テーブルにはテーマに沿った本が配置されている。「年配層には懐かしく、若者世代には新しく感じる雰囲気が良かった」と佐藤さん。盛岡での開業は、喫茶店文化が根付いている点や本に親しみがある風土、宮沢賢治など作家とゆかりがある土地であることなどから選んだという。
現在、店で働くスタッフたちの多くは20代。開業に合わせて募集を行うと100件以上の問い合わせがあった。佐藤さんは「トレンドを追うのではなく、長く続けられる業態であること、そして地域にマッチした分野であること、多くの人が働ける場所であることも重視した」とも話す。スタッフたちはSNSの活用など、若者ならではの得意分野を生かして店舗を盛り上げる。
9月24日のオープンからわずか1カ月で、来店客のほとんどはリピーター。メニューの豊富さのほか、朝・昼・夜の時間帯によって変わるブレンドコーヒーや、その日の天気によって色が変わるクリームソーダ、日替わりのモーニングセットなど何度も足を運びたくなる仕掛けが人気を集める。見た目にこだわったメニューも多い。「いわゆる『映える食べ物』に挑戦したいけど、若者向けの店には入りづらいという人も少なくはない」と佐藤さん。落ち着いた雰囲気の店内で「写真映えするメニュー」を食べられるのも好評を得ているポイントだという。
同店が目指すのは、「地域に根付き、広い年齢層に愛され、いつでも誰とでも来店できる場所」。佐藤さんは「店を選ぶとき『そういえば若草文庫があるよね』と思い出してもらえる存在でありたい。若いスタッフの成長と共に来店客が増え、地域に浸透し、『ここには入りづらい』と感じる人がいない、ほっとできるカフェになれば」と話す。
営業時間は7時~21時(10月31日までは23時閉店)。