盛岡てがみ館(盛岡市中ノ橋通1)で現在、特別展「1923」が開催されている。
今から100年前の1923(大正12)年をテーマにした同展。同年の盛岡に関する資料と、発災から100年がたつ関東大震災に関する資料が収蔵されていることが企画のきっかけになったという。学芸員の山崎円さんは「そういえば100年前っていつ頃だろう、という素朴な疑問が始まり。令和の時代から大正という年号を聞くとずっと昔のように感じるが、今を生きる人の中にも大正生まれがいると思うと、そんなに昔のことではなく、実は身近なのかもしれない。懐かしい気持ちや新しい発見につながればという思いで企画した」と話す。
資料は100年前の盛岡に関する地図や絵はがき、関東大震災についての雑誌や手紙など17件24点を展示。盛岡の資料としては、1923年に東山堂が発行した盛岡市の地図や、同年10月に山田線盛岡-上米内間が開通したことを記念した絵はがき、気象観測などを行う「盛岡測候所」の落成を記念した同年9月8日付のスタンプが押されたはがきなどが並ぶ。同年に「盛岡銀行」が発行した本「盛岡案内記」の中では、名所の一つとして「石割桜」が紹介され、文章の中では「本年三月天然記念物と指定さるるに至つた」と書かれている。
関東大震災の資料は3冊の雑誌と、震災後に東京から盛岡へ届いた2通の手紙を紹介。雑誌は発災翌月の10月に発行されたもので、山崎さんは「記者たちが民衆へ伝えようと奔走したことも伝わる」と話す。
東京から届いた手紙は2通ともお見舞いの手紙へのお礼を伝える一文があることから、震災直後に盛岡から東京への手紙が届いていることが考えられる。手紙の文面では、自分の無事を伝える内容のほか、「石の塀が倒れ、下敷きになった人がいる」「火事の勢いがすさまじかった」と地震災害の様子も書かれている。
「まさか関東大震災に関連した手紙もあると思わず、驚いた」と山崎さん。「1通の消印が10月13日となっていること、そしてお見舞いの手紙へのお礼をしているということは、震災からわずか1カ月ほどで郵便の機能が復活していると推測できる。この状況下で手紙が届き、さらにはそれに返事を送るということにもびっくり。どうやって届けたのだろうかと、郵便局員たちの思いや誰かを心配する人の気持ちを考えてしまう」と手紙を見つめた。
開館時間は9時~18時(最終入場は17時30分)。入館料は一般=200円、高校生=100円、中学生以下と盛岡市に住所を有する65歳以上、障がい者手帳を持つ人と付き添い介護者は無料。第2火曜休館。12月5日まで。10月11日~17日は企画展の展示入れ替えのため、臨時休館する。