岩手県立図書館(盛岡市盛岡駅西通1)で現在、企画展「幾歳(いくとせ)経るとも要心(ようじん)あれ~地震・津波災害の記憶~」が開催されている。
今年は昭和三陸地震から90年、関東大震災から100年に当たることから企画した同展。日本と地震の関わりを示しながら、関東大震災と昭和三陸地震、2つの地震災害での教訓を後世へと伝える震災伝承について紹介する。期間中には9月1日の防災の日があることから、地震・津波災害に知識を深め、防災について考えるきっかけづくりにもつなげる。
担当者の小林亜衣さんは「地震は日本にいる限りどこでも遭遇する災害。岩手に住んでいると関東大震災は他人事のように思えるが、どの時代でも、どの場所でも起き得る災害を自分のこととして捉えてもらいたい。過去の災害から学ぶことはたくさんある」と話す。
展示は3章構成で、第1章では地震や津波の発生の仕組みなどについて解説。近年発生したチリ地震や東日本大震災に関する資料も並ぶ。第2章は「大正の大地震、昭和の大津波」と題し、関東大震災と昭和三陸地震について取り上げる。関東大震災で発生した大規模な火災や、昭和三陸地震での津波の被害について、当時の記録や写真などの資料で紹介する。「2つの災害は多くの人にインパクトを与え、災害研究が進むきっかけや、防災の強化につながっている」と小林さん。
3章は、災害に関する記念碑や慰霊碑といった石碑、文学による記録など災害を伝える方法について取り上げる。関東大震災では、芥川龍之介など文筆家が雑誌で震災について発表しているほか、多くの作家や研究家が調査を行ったノンフィクション作品を刊行している。
同展のタイトルは宮古市重茂の姉吉集落にある「大津浪(つなみ)記念碑」の最後の一文、「幾歳経るとも要心あれ」から取った。この石碑は、明治三陸地震と昭和三陸地震の津波被害を伝承するもので、「此処(ここ)より下に家を建てるな」と記している。昭和三陸地震の津波以降、石碑より下に住居は建てられておらず、東日本大震災では石碑の約50センチ手前まで津波が迫ったが、石碑を越えることはなく、姉吉集落で建物被害は1軒もなかったという。
9月4日には企画展に関連した映画会として、関東大震災を取り上げた映像作品も上映する。
小林さんは「まさに『幾歳経るとも要心あれ』。災害は明日来るかもしれないし、今この瞬間に来るかも分からない。災害に対して備えることはいつの時代も変わらない。過去を知ることは防災の第一歩。展示を皆さんの普段の防災に生かしてもらいたい」と呼びかける。
開館時間は9時~20時。10月9日まで。期間中の休館日は9月29日。