学者の手紙などを展示する企画展「学者たちの手紙」が現在、盛岡てがみ館(盛岡市中ノ橋通1)で開かれている。
企画のきっかけとなったのは、植物学者・牧野富太郎の手紙が同館に収蔵されていることだったという。牧野富太郎がNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」のモデルになっていることから、「この機会に収蔵資料を紹介したい」という思いで企画。担当学芸員の山崎円さんは「ここに収蔵されていることにとても驚いたし、たくさんの人に見てもらいたいと考えた」と話す。今回の展示では、植物学者の牧野にちなみ、7人の学者を手紙や書籍、写真などを通じて紹介する。
牧野の手紙は3通を展示。盛岡高等農林学校の植物学教授・富樫浩吾や同校に勤めていた雪ノ浦参之助に宛てた手紙が並ぶ。富樫への手紙では、石割桜の花などの標本製作を依頼している。その後、雪ノ浦に宛てた手紙で、依頼していた標本が届いたことに対する礼と喜びをつづっている。牧野に関連した資料としては「高知県立牧野植物園」から提供を受けた植物画の写真も展示している。「牧野博士の手紙を見に来た」と受付で話す来館者も多いという。
ほか6人の学者は、言語学者の金田一京助や物理学者の田丸卓郎、岩手医科大学の初代学長も務めた血清化学・法医学者の三田定則、刑法学者の小野清一郎など盛岡・岩手に縁のある人物を紹介。金田一京助が大学教授時代、石川啄木の研究をしていた吉田孤羊へ宛てた手紙には「卒業論文に石川啄木を取り上げたものがいる」という喜びをつづっている。ローマ字の普及に努めた田丸卓郎の年賀状はローマ字で「SINNEN OMEDETOU!」と書いてある。
展示資料を見るポイントの一つとして山崎さんは「手書きの文字や手紙の内容から感じられる印象」を挙げる。「個人的に学者といえばきっちりした文字を書くイメージがあった。たとえば、小野さんの手紙はかなり個性的な字で書かれている。この人はこんな字を書くんだというギャップが面白い。牧野さんが子(ね)年に書いた年賀状には、名前にネズミが付く植物の絵が添えてあって、さすが植物学者と感じた」とほほ笑む。
山崎さんは「学者といえば真面目で固い印象を持つ人が多いと思う。もちろんきちんとした内容の手紙もあるが、喜びを語ったり、苦労を伝えたり、相手を気遣ったりとその人らしさが見えるものもある。手紙を通じて学者の皆さんに親しみを持って展示を楽しんでもらえれば」と呼びかける。
開館時間は9時~18時(最終入場は17時30分)。入館料は一般=200円、高校生=100円、中学生以下と盛岡市に住所を有する65歳以上、障がい者手帳を持つ人と付き添い介護者は無料。第2火曜休館。10月9日まで。