盛岡市動物公園ZOOMO(ズーモ、盛岡市新庄)が現在、ツキノワグマと人間の関係に焦点を当てたシリアスゲームの開発に取り組んでいる。
シリアスゲームは教育や社会課題を目的に、現実で起こり得るさまざまな問題についてゲームを通じて疑似体験し、考えるというもの。ツキノワグマと人間の共生をテーマにしたゲーム開発のきっかけになったのは、近年増加しているクマ被害に関するニュースだった。
担当者の荒井雄大さんは「自然豊かな岩手では、毎年クマに関するニュースを見聞きする。最近ではクマが市街地で目撃されたことも注目されたが、ニュースの内容はクマによる被害やクマの怖さを知らせるようなものばかりだと感じていた。クマが山から街へ降りてくる理由や事前の対策、クマと良い関係を築く方法についてはなかなか取り上げられない」と話す。
そこで子どもから大人まで遊べるゲームを通じて、クマとの共生を考えるアイデアを考案。ゲームでは、ZOOMOでも飼育しているニホンツキノワグマと人間の理想的な共生環境をつくりながら、ニホンツキノワグマが自然の中で担っている役割や人間側がとれる対策について学ぶ。
ボードゲーム形式で、プレーヤーは他のプレーヤーと協力して自分の街をつくりながら、全プレーヤー共通の財産となるクマが暮らせる豊かな森を守り育てる。街に畑を作ると資金を得ることができ、クマの街への出没や被害を防ぐためのアイテムカードを入手したり、森に植樹したりすることができる。ゲームの勝敗は街や森を豊かにすると得られるポイントの合計で競い、クマが街へ出没したり被害が出たりすると減点。森からクマがいなくなる、もしくは森の木がなくなると全てのプレーヤーが負けとなる。
ゲームの中では、ニホンツキノワグマが植物の種を運んで森を育てるなどクマの森での役割を取り上げるほか、クマ対策のアイテムカードには「草刈り」や「清掃」「ラジオ」といった誰でもできる対策が強い効果を持つように設定した。「電気柵やわなといった対策はもちろん効果はあるが、費用面の負担は大きく現実的ではない側面もある」と荒井さん。「例えば地域で一斉に草刈りを行うとクマへの防除効果もある。誰でもできる小さなことをみんなでやることで大きな効果を出し、良い環境づくりにつながる」と話す。
現在、ゲームの開発・製造費用をクラウドファンディングで募っている。完成したゲームは園内での啓発活動に活用するほか、学校や児童施設、自治体への寄贈なども検討している。
荒井さんは「ZOOMOでは身近な動物たちと人との関係をより良くする活動に取り組み続けてきた。ゲームを通じて身近なクマという動物について知ってもらい、必要以上に怖がらず、共生できることについて考えてもらえれば」と呼びかける。
支援は一口3,000円~。6月30日23時まで。