矢巾町が運営しているユーチューブチャンネルで4月21日、町内にある不来方高校軽音楽部で活動するバンドのミュージックビデオが公開された。
ミュージックビデオは、同町の地域おこし協力隊として活動する中田雅博さんが中心となって制作。中田さんは昨年町内で行われたイベントで不来方高校軽音楽部の演奏を初めて聞いた。中田さんは「協力隊として矢巾に来てから、小学生や中学生、高校生が披露する音楽系の発表は伝統芸能に関連したものが多かった。それ以外の音楽をやっている生徒もいるのだと知り、一緒に何かやってみたいと思ったのがきっかけだった」と話す。
民間企業で映像制作の経験があった中田さん。別の事業で同校の生徒や教員とつながった際に、学校側に「ミュージックビデオを制作してみないか」と提案。部活内で活動するバンドの中から、オリジナル曲を持っている「タソガレ星煌群(しょうこうぐん)」のミュージックビデオを制作することに決めた。「学生の本分は学業と学校行事」と田中さん。忙しい学生生活の合間を縫って生徒らと一緒に準備を進め、今年3月ごろから本格的に制作を始めた。
ミュージックビデオに使った楽曲は「灰色のラズライト」。「起立、礼、着席」や「青春」といった高校生活を感じさせる歌詞が使われた楽曲の世界観に合わせ、撮影は学校内で行った。生徒たちは自分たちが好きなアーティストのミュージックビデオを参考に「これをやってみたい」「こうしてみたい」という思いを中田さんに伝え、中田さんは「学校内で撮影するなら」という条件の下、試行錯誤しながら生徒たちのアイデアをできる限り再現した。
「メンバーが将来大人になった時にも話の種になるようにと思いを込めた。高校生の頑張りを大人たちが支えて、良い形に仕上げることができたと思う」と中田さん。完成した映像を見て高校生たちも喜んだという。
矢巾町は2016(平成28)年に「音楽のまち やはば」を宣言。ミュージックビデオの制作と町公式ユーチューブチャンネルでの公開は、「音楽のまち」として新たな価値を見出し、魅力を高める企画を兼ねている。町企画財政課情報係の藤原一仁さんは「現在公開している動画の中でも視聴数の伸びがよく、評価も高い。これから再生数が増えていくとうれしい」と期待を込める。
今後も音楽活動に取り組む町民を対象にミュージックビデオを制作予定。中田さんは「音楽には多様性がある。矢巾の音楽といえば合唱や吹奏楽、民謡がよく取り上げられるが、それ以外の活動もあり、それを取り上げることで『音楽のまち』としての説得力を強めたい」と意気込む。