温泉旅館「新安比温泉 静流閣」(八幡平市)が4月23日、客室の一部を改装した「ワーケーションルーム」と、レストランを改装した「コワーキングスペース 結 Yui」の供用を開始する。
改装の背景には新型コロナウイルス感染症の影響による宿泊客の減少がある。「静流閣」取締役の橋本駿さんは「過去に類を見ない打撃を受けた。現状に対して立ち止まっているのではなく、次につなげるためのアイデアを考えていた」と話す。
着目したのは、リモートワークの普及といった働き方の変化。中でも、旅先で仕事をする「ワーケーション」に注目した。同旅館はビジネス目的の宿泊客も多いという。滞在中にも快適なビジネス環境を提供しようというアイデアから、ワーケーション向けの部屋とコワーキングスペースを整備することにした。
改装したのは同旅館の宿泊棟「あじさい館」の客室のうち8室と、同じ棟内にあるレストラン。「ワーケーションルーム」は和室だった客室を洋室にし、電源タップ付きのワークテーブルを設置したほか、ウェブ会議を想定した防音性の高い壁やセキュリティー性の高いインターネット回線を備える。コワーキングスペースは、新型コロナ禍によって利用機会が減ったレストランを生かし、ワークテーブルや会議用のテーブルを設置し、会議や商談の場としても利用できる。
ワーケーションなどで訪れた利用客と課題を抱える地元企業をマッチングし、新たなビジネスの創出を支援する「ビジネス創出型ワーケーション」の事業も新たに始める。地元企業を紹介するコンシェルジュを若旦那の橋本と、女将(おかみ)の橋本英子さんが務める。
同旅館がある安代エリアの活性化にも協力し、八幡平市商工会が実施する「あしろグルチャリ事業」の発着拠点にもなっている。同事業は宿泊客や観光客が自転車でエリア内を巡るもので、フロントで電動アシスト付き自転車の貸し出しや、参加者の受け付けなどを行う。
橋本さんは「静流閣を安代エリアに訪れた皆さんと地元がつながる場所にしたい。われわれ観光業だけではく、いろいろな分野の地元企業が打撃を受けている。観光とビジネスの2つの要素を合わせて、安代と八幡平全体の活性化につながれば」と話す。
ワーケーションルームはシングルタイプとツインタイプの2種類。料金は宿泊プランによって異なり、公式ホームページなどから予約できる。コワーキングスペースは宿泊客は無料、宿泊客以外は1時間550円で利用できる。