デジタルリスク対策事業などを手掛ける「エルテス」が6月15日、紫波町への本店移転および今後の紫波町活性化戦略に関する発表会を行った。
同社は、インターネット上での「炎上」やサイバーセキュリティー対策、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などの事業を行う東証マザーズ上場のIT企業。社長の菅原貴弘さんは紫波町の出身で、昨年12月には同町と「地域のデジタル化推進に関する包括連携協定」を締結している。
東京都から紫波町への本店移転については包括連携協定の内容にもある地域のデジタル化推進のほか、地方創生を自らが実験となって進めること、同町が行っている公民連携による事例などを理由として挙げている。紫波町本店は町内の「オガール紫波」の施設内にあるシェアオフィスの一角を利用し、DXを通じた地方創生事業を展開していく。
これから同社は紫波町本店と東京本社という形になる。同社は現在完全テレワークとなっていることから、菅原さんは「コロナ禍の影響もあって生活様式も変わり、テレワーク化が進んでいるとは思うが、これは多拠点で仕事ができるということ。自分が生まれ育った場所に住民票を置きながら、好きな場所で働くこともできる。紫波町に移転したからといってビジネスには問題はない。逆に東京にいながら岩手の仕事もできるといえる」と話す。
今後は同町と連携し市民向けアプリの開発を予定。町の行政サービスに関する情報取得や手続きなどができる総合ポータルアプリと、健康増進を目的にした「お散歩促進アプリ」の2種類の開発を進める。併せて岩手県在住者の積極的な雇用や、同社の県外事業拠点で働く機会の提供、多拠点生活に向けたサポートなどを行うプロジェクトの構想もある。
アプリについては紫波町の総合ポータルアプリをモデルに全国の自治体に提供していく計画もある。熊谷泉町長は「紫波は中心部に人口が集中し、東西の地域は高齢化が進んでいるのが課題。全国に同じような課題を抱える自治体があると思う。紫波での事業をモデルに、全国に向けた発信ができるのではないかと考えている。仕事があることで人が住む、岩手にいながら全国を相手に仕事ができるという強みが生まれると感じている」と期待を寄せる。
菅原さんは「岩手の人は堅実で着実な県民性がある。信頼性もあり良い面も多いが、チャンスを逃している面もある。この県民性はセキュリティー事業などに生かせる。このような人材が集まり、仕事ができる地域にしていきたい」と意気込む。