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盛岡のリノベシェアオフィスが岩手ADC会員選賞 街並みになじむ空間づくりを

通り土間が印象的なオフィスで設計を担当した千葉さん・乙坂さん(左)と入居者の皆さん(右)

通り土間が印象的なオフィスで設計を担当した千葉さん・乙坂さん(左)と入居者の皆さん(右)

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 盛岡市を拠点に活動するデザイナーや写真家らが入居するシェアオフィス「grams design office(グラムス デザイン オフィス)」(盛岡市本町通)が、「岩手アートディレクターズクラブ(岩手ADC)コンペティション&アワード2020」で会員選賞を受賞した。

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 「岩手ADCコンペティション&アワード」は、県内のデザイナーやクリエーターらが個人の資格で参加・運営する非営利の会員組織「岩手ADC」が年に1度、1年間のクリエーティブ成果の中で優れた作品を選出す場として行われている。作品のジャンルごとに12部門に分かれ、同オフィスは「環境・空間・サイン・ディスプレイ」の部門で選出されている。

 オフィスの設計に関わったのは建築事務所「NoMaDoS(ノマドス)」盛岡オフィスの千葉光さんと乙坂譜美さん。依頼を受けるきっかけとなったのは、オフィスに入居するデザイナーの鈴木駿一さんと写真家の吉田健太郎さんだった。市内のレンタルオフィスを借りていた鈴木さんと、自宅を仕事場にしていた吉田さんが新たにより広いスペースで仕事をしようと物件探しをスタート。選んだのは10年ほど空き部屋になっていた場所だった。

 当初はすぐに使える物件を探していたが、見つけた物件はかなり古く、条件には見合わない状態だったが、空間自体を気に入っていたためリノベーションすることを決意。吉田さんと交流のあった乙坂さんを通じて「NoMaDoS」が設計に関わることとなった。

 物件は「うなぎの寝床」とも表現できる細長く間口が狭い造りと、打ちっぱなしのコンクリートが特徴。それを「場所の特性」ととらえ、「通り土間」をモチーフに取り入れた。部屋の中に木材でできた箱のような執務スペースを作り、既存のコンクリート部分が土間となるようなデザインになっている。引き戸を閉めることで執務スペース内は快適な温度を保つこともできる。奥には休憩スペース、階段を上がった部分には撮影スタジオとしても使えるスペースも設ける。

 オフィスには鈴木さん、吉田さん含めて現在4事業主が入居。個人での活動が中心だが、依頼内容によってはチームを組んだり、意見を交わしたりしながら仕事を進める。執務スペース内には互いを仕切る壁などを作らず、それぞれの働く様子が見えるように設計。入居者らの働き方を生かしたデザインになっている。

 鈴木さんは「もともと意見交換ができるような仕事場を作りたいという思いがあったので、このオフィスをとても気に入っている。最初は入居者それぞれが欲しい空間を伝えていてまとまりがなかったが、それをうまくくみ取り、形にしてもらえたことがうれしい」と話す。

 「場所の特性」は建物や空間だけではなく、地域の歴史背景を取り入れるという点にも生かされている。オフィスのある「本町」には昔、京風の町家が多かったとされ、そこから土間のデザインを思い付いたという。

 乙坂さんは「せっかく盛岡にいるのだから、盛岡の素材や地域の歴史、工芸品を取り入れた空間づくりをしていきたい。依頼の通りに設計するだけではなく、『これがあったらいいのでは』というものをくみ取る設計も重要だと考えている。今回のオフィスだと、広々とした開放感のある土間と、快適な作業環境の整ったコンパクトな執務スペースでメリハリをつけた」と話す。

 設計に関わる千葉さん、乙坂さんをはじめ、入居者らの中にもU・Iターンで盛岡へ来た人が多い。千葉さんは「このオフィス、そして今回の受賞が盛岡へのU・Iターンで活躍している人がたくさんいるということを知ってもらう機会にもなれば。住宅や企業、商店など用途やジャンルを問わず、街並みを生かした面白い空間づくりを続けたい」と話す。

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