「もりおか歴史文化館」(盛岡市内丸)で現在、企画展「災害の記憶-盛岡藩の被災・救済・防災-」が開かれている。
2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災から今年で10年目を迎えることから企画した同展。これまでの展示では盛岡藩の歴史として領内で起きた災害について触れたことはあったが、「災害」を一つのテーマとして取り上げることは今回が初となる。
同館は2011年7月に開館。震災発生時は開館に向けて準備を行っている最中で、一時は開館が危ぶまれたという。学芸員らも東日本大震災に特別な思いを持ち、今年で節目を迎えることから企画展を立ち上げたという。担当学芸員は「東日本大震災は私たちの記憶に深く刻まれている一方、決して忘れてはならない災害の一つだと思っている」と話す。
今回の展示では江戸時代の盛岡藩で起きた災害の中でも自然災害をメインに、地震と津波、岩手山の噴火、盛岡城下町での洪水と火災について取り上げる。現代のように写真や動画の資料はないため、文字で残された記録を読み解き、災害の被害状況や対応などを紹介。盛岡藩で政治を取り仕切る家老が書き続けた政務日誌「盛岡藩家老雑書」をはじめとする藩の公式記録や後世に書かれた編さん物などの文献を基本資料に30点が並ぶ。
文字資料の一部には原文のほか、現代の文字に置き換えた「翻刻(ほんこく)」と現代語訳を用意。現代語訳は「被害状況報告書」というパネルで業日誌風にまとめて、読みやすさも重視した。
江戸時代の盛岡で発生した地震の中で、記録があり特に被害が大きいものは6回あったという。地震・津波の章の「被害状況報告書」パネルでは、被災地域の地名を赤い字で表示。「盛岡藩国絵図」では被災地域の地名と場所も示し、東日本大震災と被災地が重なっていることが分かる。
同館では今後、東日本大震災当時の写真と現在の写真などを展示して復興状況を紹介するテーマ展「被災地の今-復興、道半ば-」の開催や、3月11日には2階展示室の無料開放を予定している。
学芸員は「災害の記憶は風化させない取り組みが必要。今回の展示は今から300年前、400年前に起きた災害を取り上げているが、これもある意味で風化させないための取り組みといえる。限られた資料を読み解いていくことで当時の災害の実態を知り、伝えることもできる。この展示を通じて、改めて3.11を振り返り、そして現代を生きるための防災について考えるきっかけになれば」と呼び掛ける。
開館時間は9時~18時(入館は17時30分まで)。観覧料は一般=300円、高校生=200円、小・中学生=100円。盛岡市在住・就学中の小中学生と、市内在住の65歳以上は無料。3月15日まで。