「もりおか歴史文化館」(盛岡市内丸)で現在、企画展「盛岡と北海道 盛岡藩と蝦夷(えぞ)地の関係と交流史」が行われている。
担当学芸員の熊谷博史さんは、企画のきっかけについて「盛岡の人にとって北海道は物理的な距離も、心の距離も近い存在だと感じていた。旅行や仕事で北海道を訪れるほかに、家族や親戚、友人に会いに行く人も多く、何かと行き来がある場所ではないか」と話す。
もう一つのきっかけには、宮古と室蘭を結ぶ「宮蘭フェリー」の就航がある。宮古は盛岡藩の主要な港であり、室蘭は北海道が「蝦夷地」と呼ばれていた時代に、盛岡藩が陣屋を構えて警備に当たっていたというつながりがある。盛岡と北海道が200年以上も前からさまざまな面で関わりを持っていたことや、2つの地域がなぜ親しいのかに注目し、江戸時代の関連資料を中心とした展示でひもといていく。
今回展示する資料51点は全てもりおか歴史文化館が収蔵しているもの。同館には北海道にまつわる資料が多く収蔵されているが、常設展示などでは紹介する機会がないという。企画展などで焦点を当てることで、資料の展示機会を生み出そうという思いもある。
展示する資料は、絵や図が描かれているものをメインに据え、見て楽しみながら盛岡と北海道のつながりが分かるように工夫。北海道で暮らすアイヌ民族の様子を描いた「室蘭周辺アイヌ風俗図」は10メートル近い絵巻物で、アイヌと当時の日本人の交流が描かれ、盛岡藩の人間が作ったのではないかと類推されている。このほか、室蘭や函館など盛岡藩が拠点を置いた地を中心に、海岸線を描いた絵巻物や各地の地図などの資料が並ぶ。
期間中は学芸員が資料解説を行うギャラリートークや講師を招いての関連講座を行うほか、同館からも近い「盛岡てがみ館」でも来年2月から北海道にまつわる企画展がスタート。「盛岡てがみ館」では明治期の資料を中心に取り上げる予定で、2館のコラボ企画として「謎解きラリー」も企画している。
熊谷さんは「盛岡と北海道の関係については、何となく知っている人もいるかと思う。盛岡の地に、北海道にまつわる資料が多く残っているというのが2つの地域の交流を証明する何よりの印になっている。この企画展をきっかけに、盛岡から北海道に思いをはせ、北海道の皆さんにも盛岡について気にしてもらえたら」と呼び掛ける。
開館時間は9時~18時(入場受け付けは17時30分~)。観覧料は一般=300円、小・中学生=100円。来年3月8日まで。