岩手県ゆかりの作家らによる芥川賞候補作品をまとめたアンソロジー「岩手の純文学」が3月17日、東洋書院(東京都新宿区)から出版された。
同書は、岩手にゆかりのある作家7人による芥川賞候補となった作品を集めたもの。宮沢賢治を始め岩手ゆかりの作家は多く、直木賞受賞者は5人いるが、芥川賞では惜しくも受賞を逃している。選者を務めた脚本家の道又力さんは「落選したものの優れた作品が残っていることを広めたい」という思いで、アンソロジーにまとめることを考案した。
道又力さんは「芥川賞の場合、受賞作以外は出版されないまま埋もれてしまうことが多い。岩手からも多くの候補作品が生まれ、良い作品があるということが知られていないのはもったいない。もっと知ってほしいという思いがあった」と話す。
本に収録されているのは、森荘已池(そういち)の「氷柱(つらら)」、儀府成一の「動物園」、川村公人(こうじん)の「盆栽記」、池山廣の「日本の牙」、内海隆一郎の「蟹の町」、有爲(うい)エンジェルの「踊ろう、マヤ」、佐藤亜有子の「葡萄(ぶどう)」の芥川賞最終候補となった7作品。道又さんが同書の構想について新幹線車内で話していたところ、偶然居合わせた出版社社長が聞いていたということが出版のきっかけとなったという。
道又さんは「純文学は難しく敷居が高いと思われがちだが、今の時代に読んでも面白い作品ばかり。改めて岩手の文学の奥深さを感じられると思う。80年以上の歴史がある芥川賞で、岩手の作家が1人も受賞していないのは少し寂しい。新しい才能に受賞を目指してほしい」とも呼び掛ける。
価格は2,500円。A5判、320ページ。