
盛岡市が現在、市指定有形文化財「原敬生家」のかやぶき屋根修繕のため、ふるさと納税制度を活用して寄付を受け付けている。
「原敬生家」は、第19代内閣総理大臣を務め、平民宰相とも呼ばれた原敬が15歳まで過ごした家で、1850年に祖父・直記が建てた武家屋敷。当初は250坪ほどの大屋敷だったが、現在は約5分の1が残されている。季節ごとに限定公開しているほか、ワークショップや原の命日に行う茶会などイベントの会場としても活用され、地域の人が集う憩いの場としても愛されている。
当時の建築様式が分かる貴重な建物である一方、生家のシンボルでもあるかやぶき屋根は劣化が進んでいる。近年の豪雨やカラスによるかやの抜き取りなどの影響もあり、断続的な雨漏り、床板の腐食、損傷した部分からの小動物の侵入なども起きているという。特に西側の屋根は損傷が激しく、植物が植生し、かやが崩れ、今年4月には天井の一部が雨漏りによって落下し、応急修繕を行った。
この状態が続くと修繕が困難になり、安全性の面から一般公開などを中止せざるを得ないが、かやぶき屋根のふき替えには高い技術とススキやヨシなどの貴重な材料、多額の費用が必要となる。昨今の財政状況では修繕費を捻出することが厳しく、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディング「ガバメントクラウドファンディング」を通じて寄付金を募ることとした。寄付金を有効的に修繕に使うため、返礼品は設けない。
かやぶき屋根のふき替えは、1996(平成8)年度に全面ふき替えをして以降、行っていない状況だという。屋根を全面ふき替えるには約2,700万円が必要だが、今回は最も緊急性を要する西側の屋根のふき替えを目指して最初の目標を700万円に設定。2026年の6月から修繕工事を行う予定で、周りの眺望になじむように整備を進めていくという。
市教育委員会事務局歴史文化課学芸主査の阿部雄太さんは「『原敬生家』は、170年たった今でも大切に守られ、憩いの場でもあり、市指定有形文化財でもある。皆さんに愛され、活用されている建物を未来に受け継ぐためにも、支援をお願いしたい」と呼びかける。
寄付はふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」のガバメントクラウドファンディング専用ページで12月14日まで受け付ける。