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盛岡・さわや書店が一冊の本を復刊へ導く ツイッターで呼び掛け

さわや書店フェザン店の売り場。これと同じパネルが全国の書店にも並ぶ

さわや書店フェザン店の売り場。これと同じパネルが全国の書店にも並ぶ

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 「さわや書店フェザン店」(盛岡市盛岡駅前通)の店員、長江貴士さんの呼び掛けで、「ひとさらいの夏」(富士本由紀さん著・双葉文庫)の復刊が決定した。

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 「ひとさらいの夏」は、さまざまな状況下に置かれ行き詰まった女性たちを主人公にした7つの作品からなる短編集。出版元である双葉社でも在庫が少なくなり、担当者が「あと50冊ほどしかないが、取り扱ってくれないか」と同店に相談し、在庫を全て同店で販売することとなった。

 双葉社第2営業部の田中沙弥さんは「今回の復刊がなければ絶版になっていたので、まさに奇跡だと思う。長江さんから今回の企画の話を聞いた時も成功するか半信半疑だった。好きな一冊だったので、最後は好きな書店で販売してもらおうと相談したところ、こんなことになるなんて信じられない」と話す。

 復刊を呼び掛けた長江さんは、昨年大きな話題を呼んだ「文庫X」の発案者。作品を読み面白いと感じ、「ここで売り切れて絶版するのはもったいない」という思いから復刊計画を考案。「皆さんのお力をお借りしたい」という前置きを付け、ツイッターを通じて「出版社に在庫がないか電話してほしい」と他の書店員に呼び掛けるともに、「書店員以外の人も書店に行ったら在庫がないか、取り寄せられないか問い合わせてみて」と投稿した。その結果、全国各地や海外からも反響があり、同書の復刊が決まった。

 長江さんは「正直、成功するとは思っていなかった。自分でも可能性は低いと思っていたし、出版社側からも難しいのではという意見はあった。うまくいったらラッキーくらいの気持ちで挑んでいたので、とても驚いている。文庫Xの効果が続いてくれたおかげなのかもしれない」と話す。

 同店を含めた全国約70店舗でのみの展開で、3月上旬から順次取り扱いが始まっている。復刊された本には同店が製作した紹介パネルのデザインを取り入れた帯が巻かれるほか、各書店の売り場にも同様のパネルが展示される。

 長江さんは「文庫Xもそうだが、今回の呼び掛けも本との出合い方の一つ。一緒に盛り上がりたい、関わりたいと思ってもらえたことが成功につながったと感じている」と話す。「多くの人に『共犯者』になってもらえてよかった。また皆さんと一緒に書店が面白いと感じてもらえることを仕掛けていきたい」とも。

 取り扱い書店は同店ツイッターで確認できる。

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