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くどうれいんさん初の童話「プンスカジャム」 怒りとの向き合い方、温かく表現

「プンスカジャム」の表紙

「プンスカジャム」の表紙

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 盛岡市在住の会社員で作家のくどうれいんさんによる初の童話「プンスカジャム」が9月5日、福音館書店から出版された。

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 同作品の主人公は小学2年生の男の子・ハルくん。友だちに遊ぶ約束をすっぽかされ「プンスカ」怒っているハルくんの前に、「あなたのプンスカ、ジャムにします」と書いてある不思議な車「あんぐりベーカリー」と「あぐりさん」というおばあさんが現れ、ハルくんはあぐりさんと一緒に「プンスカジャム」を作るという物語。くどうさんによると、読み聞かせすることも意識し、声に出して気持ちいようなテンポの良い文章に仕上げたという。絵は漫画やアニメーションなどで活躍するくりはらたかしさんが担当する。

 作品のベースになっているのは、くどうさんが高校生時代に高校文芸コンクールの児童書部門に応募するために書いた「ベーカリーあんぐり」という話。その時にはいろいろな人が「ベーカリーあんぐり」を訪れ、怒りを煮詰めてジャムにする内容だったという。怒りをジャムにする表現は、くどうさん自身が「怒っているときは煙がもくもく出てくる感じがする」という感覚や、「その煙を綿あめみたいにしてどうにかできないか」「砂糖を煮詰めるようにできないか」というアイデアから生まれた。

 くどうさんは「最初は怒りをジャムにして収めるという作品だったが、コロナ禍の中で『本当にこれでいいのだろうか』と思うことがたくさん起きて、『怒りは自己責任で解消するべき』ではなく『怒りとの向き合い方』を考えるような絵本にしたいと思った」と話す。

 作中ではあぐりさんがハルくんの話をゆっくり聴き、ハルくんの「プンスカ」を引き出して、一緒に「プンスカジャム」を作り始める。あぐりさんは、読み聞かせをする大人や本の対象年齢よりも上の「大きな子ども」たちにも愛着を持ってもらえるようなキャラクターとして作り、「まんつ まんつ ねまれのす」という盛岡弁のような魔法の呪文を使う。「誰かの怒りに対して、励ましたり説教したりするのではなく、ただ受け止めてあげたい」というくどうさんの気持ちが「あぐりさん」につながっているという。

 「何歳になって怒ったっていい」とくどうさん。「怒るということは、消化しきれないことが何か起きているということで、本当に解決するのであれば『どうして怒ったのか』をゆっくり考えることが必要ではないかと思う。でも、大人ならあぐりさんのように聴けるようになりなさい、というつもりはない。時には小さなお子さんがあぐりさんになり、プンスカ怒るハルくんのような大人の話を聴くこともあると思う。年齢にかかわらず『プンスカ』に接するとき、この物語の登場人物のことを思い出してジャムを煮詰められるような社会であってほしい」と読者へメッセージを送る。

 対象年齢は小学校低学年~(読み聞かせは4歳~)。サイズは22センチ×16センチ。64ページ。価格は1,210円。

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