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岩手の大学施設でアウトドア車いす導入 多くの人に森に入れる楽しみを

実技講習で雪道をぐんぐん進むアウトドア車いす「HIPOP campe」

実技講習で雪道をぐんぐん進むアウトドア車いす「HIPOP campe」

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 岩手大学農学部付属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター(盛岡市上田3)が1月20日、水陸両用のアウトドア車いす「HIPPO campe(ヒッポ キャンプ)」を導入した。

転倒を防ぐための安全対策を学ぶ受講者ら

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 同センターの農場や牧場、演習林は学内だけでなく、他大学の実習や一般市民向けの公開講座にも利用されている一方、身体などに障がいのある人が施設の利用を避ける傾向もあったという。分け隔てのないフィールドでの学びの場を提供するために、障がいのある人でも利用できるよう「HIPPO campe」の導入を決めた。

 導入を発案した農学部教授の山本信次さんは「肢体不自由の学生が入学してきた経験や、脳性まひの人がイベントに訪れたこともきっかけになった」と話す。「足場の悪い林道や農場、牧場へ普通の車いすで入っていくことは難しい。道具があれば、もっと体験してもらえるという思いがあった。できるだけ多くの人が森に入り、自然の中で楽しんでもらえる環境を目指していきたい」とも。

 「HIPPO campe」はフランス製のアウトドア用車いすで、岩手での導入は初。水陸両用で山道や砂利道、雪道、砂浜などオールラウンドで使用可能なほか、自走と介助どちらでも使うことができる。導入時には講習を受けてライセンスを取得する必要があり、今回の導入に当たって、同センターの教員と職員10人が講習会に参加した。

 講習会は同センターの滝沢演習林で、「HIPPO campe」の講習会とライセンスの発行・管理などを行う「インクルーシブ野外教育研究所」の講師を招いて実施。全ての人が楽しむことができる旅行「ユニバーサルツーリズム」の考え方や、国内外での車いすアクティビティー事例、ライセンスの取得と運用についてなどの座学を受けた後、屋外での実技講習を行った。

 実技では用具や車いす本体の解説、取り扱いに関する説明を受け、車いすの組み立てと解体に挑戦。その後は車いすの機能や安全対策、介助の仕方について学び、1人が車いすに乗り、5人が車いすを介助するフォーメーションで実際に演習林の中を歩いた。雪が積もった林道をぐんぐんと進み、傾斜のある場所や倒木も乗り越える車いすに、受講者たちが驚きの声を上げる様子も見られ、「思ったより楽に動かせる」「馬力、推進力、踏破力が想像以上だった」という感想もあった。

 講師を務めた「インクルーシブ野外教育研究所」の小泉二郎さんは「受講者の皆さんがとても楽しそうにしていたのが印象的。今日の楽しさは、車いすを利用する人へも伝わっていく。機材と技術、人の力があれば何でもできる。この場所での導入で、多様な人が岩手の大自然を楽しむきっかけになると思う」と話す。

 講習を受け、「アップダウンの激しい道を走り、こんなに動かせるのかと驚いた」と山本さん。「これまで森の奥に入れなかった皆さんに、森の中を訪れてもらうことが楽しみ。どんな学生が入学しても、どんな人が利用しても、皆同じく自然の中でさまざまな体験をしてほしい」と期待を寄せる。

 今後は車いす導入の周知を進めるとともに、センター内施設や大学での利用を行う。

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